SEED学園編 PHASE−01
はじめに。
 アークエンジェル学園とザフト学園……。共に名門として知られる学校だったが、昨今の不況
の影響を受け、経営が困難となり、ついに合併した。
 新たな学舎の名。その名はSEED学園。初等部から大学部まで、多くの生徒が在籍する、日
本でもトップクラスのマンモス校の誕生である。そしてこの物語は、学園の中でも実に「個性的」
な生徒が集まっている中等部から始まる……。
(なおこのショートショートでは、キラたち学生キャラは、全員年齢を統一しています。現時点で
は全員15歳です)

ショート01.
頑張れアスラン

 (合併記念式典の当日)
 アスラン「キラ!」
 キラ「アスラン! 久しぶりだね」
 アスラン「ああ。同じ町内にいるのに、学校が違うとなかなか会えないものだな」
 キラ「でも、これからはいつも会えるね」
 アスラン「そうだな。これからもよろしく……」
 ラクス「アスラン、そちらの方は?」
 アスラン「ああ、ラクス。こいつはキラ・ヤマト。幼稚園からの親友だ。最も、最近はあまり会っ
       てなかったがな。キラ、この女性(ひと)は俺の婚約者で…」
 ラクス「ラクス・クラインと申します。あの、キラ様は今、お付き合いされている女性はいらっし 
      ゃられるのですか?」
 キラ「えっ? い、いや、いないけど……」
 ラクス「では、私とお付き合いいたしましょう。わたくし、貴方に一目惚れいたしました。お付き
     合いしましょう。是非しましょう。そうしましょう。さあ」(キラの手を引っ張り、どこかへ行
     ってしまう)
 アスラン「………………えーと、これって婚約解消って事なのかな?」
 ハロ「鈍イゾ、アスラン!」



ショート02.
SEED学園中等部・修学旅行記(京都・奈良へ二泊三日)

その1.出発前 〜見えない壁を感じました〜

 イザーク「修学旅行に今時、京都・奈良だと? 小学生でももっとマシな所に行くぞ!」
 キラ「いいじゃないか。僕は結構楽しみだけど」
 アスラン「俺もだ。まだ行った事が無かったしな」
 ラクス「私はキラと一緒なら、どこでも構いませんわ」
 カガリ「あたしも別に文句は無いよ」
 ディアッカ「伝説の千年王城、失われた『和』の心が今なお残る花の都……。所詮、お子様に
        は京都の良さは分からんか」(バカにした目でイザークを見る)
 イザーク「ふん、どいつもこいつも……」
 ニコル「イザークは、他にどこか行きたい所があったんですか?」
 イザーク「ああ、やっぱり海外だろ! アメリカとかヨーロッパとかオーストラリアとか……」
 他一同「海外なんて、もう行き飽きたなあ」
 イザーク「えっ?」
 キラ「カナダの大森林とか、本場のディズニーランドにも行ったし……」
 アスラン「ヨーロッパも、もうほとんどの国を見たな」
 ラクス「ご存知ですか? エジプトの三大ピラミッドって、意外と町のすぐ近くにあるんですよ」
 カガリ「オーストラリアの海って、ホント綺麗なんだよね。特にグレート・バリア・リーフの辺りは
     何度潜っても……」
 (フレイやサイも加わり、海外話で盛り上がる一同。一人、取り残されるイザーク)
 イザーク「くっ……。このブルジョア共め!」
 ニコル「イザーク、そういうの今は『セレブ』って言うらしいですよ」
 イザーク「うっさい!」


その2.出発当日 〜ちなみにナタルは数学担当。生徒指導もやってます〜

 クルーゼ(語学)「さて、SEED学園の賢明なる生徒諸君は分かっていると思うが、修学旅行 
            はただの『旅行』ではない。学校の授業の一環、勉強の時間だ。くれぐれも 
            我が校の名を辱めるような軽率な行動は慎むように。あと、服装についてだ
            が、一応私服を許可してあるが、それでも限度というものがある。下らない 
            仮装(コスプレ)まがいの格好はしないように」
 生徒一同・心の声『あんたが言うなよ、仮面教師』
 バルトフェルド(歴史学)「あと、旅先での不純異性交遊も禁止だ。旅先で開放的な気分になる
                のは分かるが、そこはグッと我慢の子、だ」
 アイシャ(一般人)「ウン、ソウダヨ。アンディノ言ウトオリ」
 フラガ(体育)「修学旅行に恋人を連れて来るような奴が言っても、説得力無いぞ」
 バルトフェルド「勝手に着いて来たんだ。君だって、恋人のラミアス君と一緒じゃないか」
 マリュー(物理・化学)「バ、バルトフェルド先生! 私とフラガ先生はそんな……」
 フラガ「俺たちはお仕事だからいいの。まあ確かに、マリューとは結婚を前提に付き合ってま 
      すけどね。マリュー、結婚式の日取り、いつにしようか?」
 マリュー「フ、フラガ先生!」
 生徒一同・心の声『こんな人たちでも勤まるなんて、教師って楽な仕事だなあ……』
            (多大な誤解)


その3.一日目・奈良東大寺大仏殿 〜くぐりましょう〜

 キラ「(大仏を見上げて)うわあ……。大きいなあ……」
 サイ「奈良時代って、今から千年以上も前だろ? そんな大昔の人間が、こんな大きな物を 
     作ったなんて、信じられないな……」
 ディアッカ「感動しているところ悪いが、大仏本体は江戸時代に修復された物で、奈良時代当
        時の物は台座だけだ。大仏の大きさも、オリジナルより一回り小さくなっている」
 トール「それでこの大きさか……。凄いなあ」
 アスラン「? あの柱に開いてる穴は何だ?」
 ディアッカ「ああ、あの穴は大仏の鼻の穴と同じ大きさなんだ。潜り抜ければ、頭が良くなるっ
        て言われてる」
 他一同「なるほど。じゃあイザーク、どうぞ」
 イザーク「どういう意味だ!」


その4.二日目・京都自由見学 〜Gジェネとかスパロボとかで〜

 サイ「東寺、二条城、清水寺、下鴨神社に三十三間堂、そして、金閣寺……。よし、これでイ 
     ザークとディアッカの立てた見学プランは終了だな」
 フレイ「ええ。けど、日本マニアのディアッカはともかく、イザークがこんな健康的というか、マト
      モな見学プランを立てるなんて、ちょっと意外だわ」
 イザーク「貴様なあ……。健康的じゃないのは、ディアッカの方だろ。友達(トール)の彼女(ミ 
       リィ)に手を出すような男なんだぞ」
 キラ「…………友達の彼女に、か」(ちょっと罪悪感)
 ニコル「? アスラン、どうかしましたか? さっきからボーッとして……」
 アスラン「ん? ああ、さっき金閣寺で会った人の事でな」
 ニコル「金閣寺で?」
 カガリ「ひょっとして、あいつの事か? サングラスかけて、赤い服着た金髪の男」
 ニコル「ああ、いましたね。金閣寺を見て、嬉しそうに微笑んでいた……。あの人がどうかしま
      したか?」
 アスラン「気になるんだ。あの人とはどこかで会ったような……。いや、これからどこかで会う 
       ような気がするんだ」
 カガリ&ニコル「?」


その5.二日目・京都自由見学 〜男子禁制・オチは完全にフィクションです〜

 (嵐山。とある甘味茶屋に女性陣集結)
 カガリ「男連中は、みやげ物を見て回るそうだよ。こういう店には、男は入りづらいか」
 フレイ「いいじゃない。たまにはこうして女だけで寛ぐのも」
 ミリィ「そうね。男の人と一緒だと、気を使う事も多いし……」
 ラクス「そうですわね。特にミリィさんは、トールさんとディアッカさん、二人もお相手になさって 
      いるのですから」
 ミリィ「!!!(お茶を噴き出しそうになる) お、お相手って、そんな言い方! 大体あたしは 
     トールと付き合ってて、ディアッカとは別に何でも…」
 フレイ「あら? その割には最近、ディアッカと一緒にいる事が多いみたいだけど?」(意地悪
      そうに微笑む)
 ミリィ「あ、あれはディアッカが勝手に! フレイだって、この前キラと一緒に町を歩いてたじゃ
     ない! 腕なんか組んで、随分と仲良さそうだったけど?」
 フレイ「! あ、あれは別に…」

 (ピシッという音と共に、ラクスの持っていた湯飲みにヒビが入る)

 フレイ・カガリ・ミリィ「!!!!!!!!」
 ラクス「(ニッコリ微笑み)詳しいお話をお聞かせくださいませんか、ミリィさん?」

 (店の一番奥の席。偶然休んでいたマリューとナタルが座っている)

 マリュー「まったく、あの娘たちは大声で……って、ナタル、何をメモしてるの?」
 ナタル「いえ、少し参考にと」

 (メモの表紙には「ネタ帳」と書かれている。ナタル・バジルール、厳格な生徒指導教師だが、
  実はこっそり恋愛小説を投稿している)


その6.二日目・ホテルにて 〜夜空に花咲く『男の浪漫』〜

 (女風呂の窓の外。暗がりに蠢く五つの影)
 イザーク「(小声で)そろそろ女子の入浴時間だな」
 ディアッカ「(もちろん小声で)ああ、いよいよだ」
 カズイ「(当然小声で)結構、虫が多いね……」
 イザーク「それぐらい我慢しろ。楽園が俺たちを待っているんだ!」
 ニコル「(やっぱり小声で)ね、ねえ、やっぱりやめときましょうよ……。見つかったら、停学ぐら
      いじゃすみませんよ……」
 トール「(しっかり小声で)ニコルの言うとおりだ。こんな事、男のすべき事じゃないぞ」
 イザーク「ふん、意気地なし共め。見張りぐらいは出来るかと思って連れて来たが、とんだ腰 
       抜けだな。」
 トール「のぞきより腰抜けの方がマシだよ!」
 ディアッカ「静かにしろ、トール! いいか、女の入浴シーンを見たいと思うのは、男として当 
        然の考えだろう? ましてやその中に好きな女がいれば、それを見る事は男の  
        夢、いや、命を賭けるに値する、男の浪漫なのだ! そうは思わないかニコル、ト 
        ール?」
 ニコル「全然違いますし思いません! これは立派な犯罪です! トールさんも何とか…」
 トール「ミリィ……の入浴シーン……」(顔が赤くなっている)
 ニコル「ダメだこりゃ」(諦めた)
 ディアッカ「! 来たぞ!」

 (全員、息を呑む)


その7.二日目・ホテルにて 〜夜空に散った『男の浪漫』〜

 (ホテルの一室。サイとアスランが寛いでいるところへ、キラが散歩から戻って来た)
 キラ「あれ? イザークたちは?」
 アスラン「お前が散歩に行った後、すぐに出て行ったぞ。『男の浪漫を手に入れる』とか言って
       いたが……」
 キラ「何、それ? おみやげ?」
 サイ「さあ?」
 アスラン「分からん」
 ラクス「こんばんは。キラ、アスラン、それにサイさんも」
 キラ「ラクス?」
 カガリ「こんばんわー」
 ミリィ「お邪魔しまーす」
 フレイ「ちょっと暇だから、遊びに来たわ。いいでしょ?」
 キラ「うん、いいけど……。あれ? 今って女子の入浴時間じゃなかった?」
 ラクス「お風呂なら、夕方の内に入りましたわ」
 カガリ「バカな事を考える男子がいるかもしれないから、男子に内緒で入浴時間を変えたの 
      さ。マリュー先生のアイデアでね」
 アスラン「バカな事……か」
 サイ「そういう事をしそうな奴、いや、間違いなくする奴に心当たりがある」
 アスラン「ああ。そして、それに巻き込まれやすい奴にもな」
 ラクス「今のお時間でしたら、私たち以外のもう一組の団体客の方々が入っておられるはずで
      すわ」
 キラ「ああ、ホテルの玄関前の立て札に書いてあったね。『六十歳以上限定・京都寺社仏閣愛
    好会ご一行様』って」
 アスラン「………………男の浪漫、か」
 サイ「あいつらの冥福を祈ろう」


その8.三日目・東映太秦映画村 〜皆さん、和服も似合いますね〜

 キラ「へえ、ここって時代劇の衣装も貸してくれるんだ」
 ラクス「みんな着替えに行きましたわ。キラ、私たちも」
 キラ「ああ」

 (数分後、全員集合)

 カガリ「へえ、キラ、お侍の服、似合ってるじゃん。ラクスもお姫様の衣装、ピッタリだ」
 ラクス「ありがとうございます。カガリ様も巫女様の服がよくお似合いで、素敵ですわ」
 カガリ「ありがと。あ、ミリィも似合ってるね。どこからどう見ても、江戸の町娘だよ」
 ミリィ「ふふ、ありがと。似合うかどうか、ちょっと不安だったけど……」
 ディアッカ「いやいや、ミリィは何を着ても似合うよ。ではこの将軍ディアッカと共に……」
 トール「何が将軍だ、このバカ殿! この宮本武蔵の二刀流の前に花と散るか?」
 キラ「やれやれ……。ニコルは忍者か……。凄く似合ってるね」
 ニコル「ええ、何だか初めて着た気がしません。僕の前世って、忍者だったのかもしれません
      ね」
 キラ「サイとカズイは普通の町人。フレイは……くノ一か。似合いすぎて怖い気もするけど。そ
     れから…………イザークは何でお坊さんなの? ハゲガツラまで着けて…」
 イザーク「うっさい! サイズの合う服が、これしかなかったんだ!」
 キラ「あ、で、でも、結構似合って……。あれ? アスランは?」
 ラクス「もうすぐ出ていらっしゃいますわ。先程、少し見たのですけど、何か足りないような気が
     いたしましたので、小道具をお貸ししました」
 キラ「小道具?」

 (アスラン登場)

 他一同「…………………」

 (アスランの着ている服はボロボロ。腰には刀。背中には文字の書かれた旗を指し、手押しの
  乳母車を押している)

 キラ「アス……ラン?」

 (手押しの乳母車の中から何かが飛び出した)
 
 ハロ「チャン!」
 アスラン「大五郎……!」
 他一同「子連れ狼!? しかも結構ノリノリ?」


その9.全日程終了・帰りの新幹線の中で 〜教師も生徒もバカップル〜

 フラガ「やーれやれ、やっと終わったか」
 マリュー「お疲れ様でした、ですね。生徒も私たちも」
 ナタル「疲れましたが、楽しい旅行でした。いいネタも手に入れましたし」
 フラガ「ネタ?」
 ナタル「あ、いえ、何でもありません!」(ちょっと焦る)
 クルーゼ「まだ終わってないぞ。生徒が全員、家に無事帰るまではな」
 フラガ「やれやれ、相変わらず硬いねえ、お前さんは」
 バルトフェルド「君が軽すぎるんだよ。そんな事では、その内マリュー先生に愛想をつかされる
           ぞ」
 アイシャ「ソウダヨ。女心ハ難シイノヨ」
 フラガ「ご忠告どうも。けど、大丈夫。俺たちは愛し合ってるからな。京都にだって、新婚旅行 
      でまた来ようって約束したし」
 マリュー「フ、フラガ先生!(赤面)」
 ラクス「それはよろしいですわね」
 教師一同「!!!!!!!!」
 ラクス「私とキラの新婚旅行も京都にしましょう。二人きりの京都、きっと楽しく、素晴らしい旅
      行になるでしょうね。あ、でもキラとでしたらどこへ行っても、楽しいですけど」
 マリュー「ちょっ、ちょっと! あなたたちまだ中学生でしょ! 新婚旅行とか、男女二人で旅行
       なんて、そんな……」
 ラクス「愛し合っていれば、問題はありませんわ。ね、キラ?」
 キラ「(少し考えてから)ラクス……。君には悪いけど僕は…………」
 他一同「………………………」
 キラ「新婚旅行は、やっぱり海外がいいなあ」
 他一同「そっちかい!!!!!!」



ショート03.
追試は合格しました

 アスラン「キラ! 今回の期末テスト、赤点を取ったそうだな。アークエンジェル学園首席のお
       前らしくもない、一体どうしたんだ?」
 キラ「言い訳したくはないけど、原因は勉強不足と体調不良だね……。テストの前に、ラクス 
     の家で勉強会をやったんだけど……」
 アスラン「ラクスの家で? 二人だけでか?」
 キラ「うん……。けど、夜に……体力を消耗して…勉強どころじゃなかったんだ…………」
 アスラン「!!!!!!!!!!!! キ、キキキキキキキラ! お、お前は大事な期末テ 
       スト前に何をやって……!」
 キラ「ホント、疲れたよ……。勉強してたらハロたちがじゃれついてきて、一晩中、あいつらの
     遊び相手をさせられたんだ」
 アスラン「えっ?」
 キラ「見かけがかわいいから、無下に扱うことも出来ないし、ラクスは面白がって止めてくれな
     いし、キスしようとしたら二人の間に割り込んでくるし……。もう、散々だったよ」
 アスラン「そうか……。『あれ』の生みの親として、謝っておく。すまなかった。だがな、キラ」
 キラ「何?」
 アスラン「一番悪いのは、テストの前日に恋人の部屋へ押しかけて、真面目そうな顔して、実 
       は下心が爆発寸前だった男のように思うんだが、気のせいか?」
 キラ「ハロってかわいいよね」
 アスラン「ごまかすな」



ショート04.
真夏のデンジャラス愛ランド(何だこのタイトル)

その1.あー、夏休み!

 ラクス「夏、といえば海ですわ。皆さん、海に行きましょう。父の所有している南の島に、皆さん
     をご招待いたしますわ」

 (で、到着)

 他一同「………………」
 ラクス「? 皆さん、どうかなさいましたか? 青い空に白い砂浜。綺麗な海に生い茂るヤシの
     木。絶好の場所を選んだつもりでしたが、お気に召しませんでしたか?」
 キラ「ねえ、ラクス」
 ラクス「何ですか、キラ?」
 キラ「ここって、島、なんだよね」
 ラクス「ええ、そうですわ。周辺十キロ圏内には他の島も無い、絶海の孤島、美しい楽園です 
      わ」
キラ「………………で、この楽園に、僕たち以外に人はいるの?」
 ラクス「あら、嫌ですわ、キラったら」(微笑む)
 (キラを含む一同、ホッとする)
 ラクス「人間がいては、楽園とは言いませんわ」
 他一同「そうかもしれないけど、大事な事を間違ってる!」


その2.サバイバルに必要なものは知識と体力、そして強靭な精神です。

 (ジャングルの奥深く。イザーク、ディアッカ、ニコル、サイ、トールの五人が果実を取っている)

 イザーク「くっ! 何で中学最後の夏休みに、無人島でサバイバルをやらねばならんのだ!」
 ディアッカ「まったくだ。折角の旅行プランが台無しだぜ。ミリィを誘って、色々見て回ろうと思 
        ってたのにな」
 トール「ちょっと待て、ディアッカ。お前今、聞き捨てならない事を……」
 サイ「おい、無駄口は後にして、食料を集めろよ。ニコル、この果物は食べられるのか?」
 ニコル「ええ、大丈夫ですよ。それからそっちの赤い実も食べられます」
 サイ「そうか」
 トール「ニコルが居てくれて助かったな。でも、ニコルがこういうのに詳しいなんて知らなかっ 
      たよ」
ニコル「昔から探検ものとか冒険ものの小説が好きで、そこから色々と調べたんですよ。実際
      に役に立つとは思わなかったけど」
 イザーク「まあ、どんな奴にも取り得の1つや2つはある、って事だな」
 サイ&トール&ディアッカ「いや、そうとも限らないぞ」
 イザーク「? なぜ俺を見る?」


その3.苦労しました……(今もしてます)

 (海辺の岩場。水着に着替えたアスランとカガリが、魚や貝を採っている)
 アスラン「ふうっ……。どうだった、カガリ?」
 カガリ「ああ、アスランが持ってた銛のおかげで、ほら(捕まえた魚や貝を見せる)」
 アスラン「へえ、凄いじゃないか。これなら、今夜の分の食事は大丈夫だな」
 カガリ「そうだね。でも、銛じゃこの程度が限界だね。網があれば、もっとたくさん、楽に取れる
     んだけど……」
 アスラン「済まない。さすがに網を入れるほどの余裕は無くて……」
 カガリ「あ、いや、アスランを攻めてる訳じゃないんだ。けど、折りたたみ式の銛を持ってきた 
      なんて、準備がいいね。まるでラクスの行動を読んでたみたいだ」
 アスラン「まあな。ラクスとは子供の頃からの付き合いだから……」
 カガリ「…………子供の頃から、か……」
 アスラン「ああ」

 (カガリ、そっとアスランを抱きしめる)

 カガリ「よしよし」

 (穏やかな時間が流れる)


その4.危険! ハロに注意

 (宿代わりにした洞窟の前で)
 ラクス「お帰りなさい、キラ、カズイさん。どうでしたか?」
 キラ「うん、この付近には特に異常は無し。一週間後に迎えの船が来るまで、ここを拠点にし
     よう」
 カズイ「泉も見つけたよ。すぐ近くにあるし、水も綺麗だから、飲み水にも使えると思う」
 フレイ「ホント? 助かったわ〜」
 ミリィ「そうよね。食べ物はともかく、水が無いとオシマイだから…」
 フレイ「これで髪を洗うことが出来るわ! 一週間もお風呂もシャワーも無しだなんて、絶対に
      耐えられないわ!」
 ミリィ「…………まあ、気持ちは分かるけどね。あ、けど、いくら綺麗な水でも、生水を飲むの 
     は危ないんじゃ……」
 アスラン「水を見つけたのか? 火を沸かすなら、ライターを持ってきてる。そいつを使え」
 キラ「あ、アスラン。カガリもお帰り」
 カガリ「ただいま。結構捕れたよ」(魚や貝を見せる)
 フレイ「うわぁ、凄いわね!」
 ミリィ「ホント、銛一本でよくこんなに捕れたわね」
 ラクス「お二人のコンビネーションの賜物ですわね。随分と仲良くなられたようですし」
 アスラン&カガリ「えっ?」

 (二人の後ろからハロ登場)

 ハロ「コドモノコロカラ! ヨシヨシ! ヨシヨシ!」
 アスラン&カガリ「!!!!!!!(二人揃って赤面)」


その5.再会禁止!

 (夕食後、焚き火の前にて)
 ラクス「この島にいる動物たちは、心無い飼い主に捨てられたり、住んでいた動物園が潰れ 
      て、行き場を失った者たちなのです。かわいそうに思ったお父様が保護して、この島に
      住まわせているのですわ」
 サイ「なるほどね。ここは、人間の身勝手な都合で捨てられた動物たちの島なのか」
 ミリィ「そう考えると、ちょっとかわいそうね……」
 アスラン「動物園にいた動物もいる、という事は、ライオンやトラみたいな危険な動物もいるの
       か?」
 ラクス「いえ、そんなに危険な動物はいませんわ。あ、そういえばここにはアナもいるんでした
      わ。元気かしら……」
 キラ「アナ?」
 ラクス「アナコンダのアナです。とても食いしん坊な方で、動物園では子牛を一頭、丸呑みにし
      た事もあるそうですわ。他にも……」
 アスラン「みんな、死にたくなければ気を抜くな! そして、夜は絶対に火を絶やすな!」
 他一同「了解!(必死)」


その6.その後、迎えの船の到着が遅れ、結局十二日間も無人島で過ごしまし
た。そして、新学期

 フラガ「うーん、いい夏休みだった。マリューとものんびり羽を伸ばせたし、今日からは気を引
      き締めて……お?」

 (前を歩くキラを発見)

 フラガ「よお、キラ・ヤマト君。よく焼けてるな。海にでも行ったのか?」

 (キラの肩に手を置く。と同時に、キラの背負い投げが炸裂。宙を舞うフラガ)

 フラガ「ぐおっ!」(床に叩きつけられるフラガ)
 キラ「!!! ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか、フラガ先生!」
 フラガ「だ、大丈夫だ……。だ、だがキラ、夏休み明けの挨拶にしては、ちょっと、強烈過ぎる
      ぞ…」
 キラ「本当にすいません。夏休みに色々あって、背後から近づかれると、無意識に体が反応し
     てしまうんです」
 フラガ「そ、そうか、それは大変だな……。イテテ」
 ジュリ「せ、先生ーーーっ! フラガ先生、大変ですーーーーっ!」
 フラガ「ん? ど、どうした、ジュリ?」
 ジュリ「は、はい! ロウ君とイザーク君がケンカしてるんです! ロウ君が『今年の夏休みは
      爺さんの田舎に行って来たんだ。平和そのものでよ、退屈で仕方なかったぜ』って言 
      ったら、イザーク君が『貴様! それは中学最後の夏休みを、命がけのサバイバルで
      潰した俺への当てつけかあっ!』って……」
 フラガ「???????」
 キラ「イザーク……」(なぜか涙が出てきた)



ショート05.
SEED学園中等部文化祭、どなた様もお気軽にどうぞ
(隠しタイトルは「アスランとカガリのラブラブ一直線」笑)

その1.実際に演るとしたら、著作権とか、大道具とか大変そうです

 (クラス会にて)
 アスラン(実はクラス委員長)「では、文化祭の出し物については、模擬店と、有志による演劇
                   をやる事にします。模擬店の方は私が、演劇の方は副委員長
                   のフレイが担当します。演劇班はフレイの指示に従い、頑張っ
                   てください。それでは、会議を終わります」

(クラスは2つの班に別れる。演劇班はアスランを除く「いつもの」メンバーである)

 ラクス「それで、一体何の劇をやるのですか?」
 サイ「文化祭まであと一ヶ月か。時間があるようで、無いような微妙な時期だな」
 カズイ「おとぎ話でもやる? 脚本を書く手間は省けるよ」
 ミリィ「中学生にもなって、シンデレラや白雪姫をやるの? それはちょっと……」
 イザーク「やっぱりここは、アクション活劇だろ! セリフも少なめにできるし、見た目も派手 
       だ。これで最優秀賞はいただきだ!」
 トール「うーん、俺たちはともかく、女の子たちにはアクションは難しいんじゃ……」
 カガリ「そうだな。万が一誰かがケガなどしたら、文化祭そのものに傷が付く」
 フレイ「ふふん、任せて! 私にいいアイデアがあるわ!」

 (フレイ、学生鞄から一冊の本を取り出す)

 キラ「? これは……」
 フレイ「有名アニメのシナリオよ。これを舞台演劇用に直すの。歴史に残る大ヒットアニメだか
      ら成功間違い無し! 稽古もやり易いはずよ。これなら……」
 他一同「(シナリオのタイトルを見て)却下」
 フレイ「えーっ! どうして? みんなこのアニメ嫌いなの?」
 ディアッカ「いや、嫌いじゃない。結構好きだ」
 ニコル「けど、これは好きとか嫌いとか、それ以前の問題のような気がするんですよね」
 キラ「うん。ちょっとやってみたいけど、やったらそこで終わりなような、そんな気がする……」

 (フレイの持ってきたシナリオ、タイトルは「機動戦士ガンダム」)


その2.結局、恋愛劇になりました(シナリオはラクスがナタル先生にお願いしま
した)

 キラ「お姫様と下級騎士が、戦乱や身分の違いを乗り越え、最後には結ばれる、か……。う 
    ん、いいと思うよ。面白いし」
 サイ「よし、シナリオはこれでいこう。配役はどうする?」
 ニコル「演技力はみんな大した事ありませんから、やりたい人がやればいいんじゃないです 
      か?」
 ミリィ「ニコルって、時々、毒舌家になるわね……。けど、確かにその通りね。それじゃあ、主 
     役の下級騎士は誰がやるの?」
 ディアッカ「騎士、といえば知性と教養が大切だ。となれば、やはりこの俺が…」
 イザーク「はっ! 弱い騎士など役に立つものか! ここは俺が!」
 トール「僕だって主役やりたいよ!」
 カズイ「お、俺も……」
 ラクス「まあまあ、皆さん落ち着いてください。確かにこのシナリオはよく出来ていますけど、オ
     ーソドックス過ぎて、物足りませんわ。もう少し、楽しい要素を付け加えて見ましょう」
 キラ「楽しい要素?」
 ラクス「ええ。先日、フレイさんから面白い漫画をお借りしましたので、それを参考に」(天使の
      ようで実は悪魔の微笑み)
 ミリィ「漫画って、フレイ、ラクスに何を貸したの?」
 フレイ「えーと、『ベルサイユのばら』……」

 (一同、とある人物に視線を集める)

 カガリ「? 何だ?」


その3.教師の一位はマリュー先生。ナタルも結構人気あります

 (文化祭当日)
 フラガ「客足は上々。今年もいい文化祭になりそうだ。そして、うちのクラスの総合一位も間違
      いなし、と。賞品の『クラス全員焼肉食べ放題券』は我らの手に!」
 クルーゼ「随分と余裕だな、ムウ・ラ・フラガ。だが、勝負はまだ始まったばかりだぞ」
 フラガ「おやおや、誰かと思えば、『資料掲示』と『写真屋』なんて地味〜〜〜な企画をやって 
      るクルーゼ先生じゃないですか。悪いけど、うちのクラスの敵じゃ……。ん? あの店
      の前、凄い人だかりだな」

 (そこはクルーゼのクラスの出店だった。押すな押すなの大盛況)

 フラガ「なっ!?」
 クルーゼ「ミゲル、ラスティ。どうだ、売り上げの方は?」
 ミゲル「あ、クルーゼ先生! 見てのとおりですよ。これなら総合一位も夢じゃありません!」

 (店のあちこちには学園の美形キャラたちの写真が張られている。写真屋というよりブロマイド
  屋である)

 フラガ「! うちのクラスの奴らもいるじゃないか! クルーゼ、貴様!」
 クルーゼ「資源を有効利用しているだけだ。あと、教師の写真も売っているぞ」
 フラガ「何!?」
 クルーゼ「ミゲル、フラガ先生の売り上げはどうかね?」
 ミゲル「ドベから二番目です」
 フラガ「うっ! そ、そんなバカな……」(その場に崩れ落ちる)
 クルーゼ「ふははははは……! 残念だったな、ムウ・ラ・フラガ」
 ミゲル「ちなみにクルーゼ先生は最下位です」
 クルーゼ「ぐおっ!」(撃沈)


その4.フラガのクラスの出店はお好み焼き屋です。かなり美味!

 フラガ「ん? アスラン、こんな所で何してるんだ? 模擬店の方はいいのか?」
 アスラン「あ、クルーゼ先生にフラガ先生。ええ、模擬店の方は、シホたちが頑張っています 
       からね。クルーゼ先生のクラスも射程距離に捕らえたし、僕がいなくても大丈夫です
       よ」
 クルーゼ「ちっ……。飲食店系は地味だが、確実な売り上げが見込めるからな」
 フラガ「ふむ、なるほど。で、暇になったアスラン君は、恋人の晴れ舞台を見に行く途中だっ 
      た、と」
 アスラン「フ、フラガ先生! 恋人って、俺とカガリはそんな……」
 フラガ「誰もカガリ君がお相手とは言ってないぞ(意地悪そうに微笑む)」
 アスラン「うっ……」
 フラガ「はっはっは、いいねえ、青春真っ只中! 引き止めて悪かったな、早く行ってやれ」
 アスラン「…………ええ、行きたいのは山々なんですけど……」
 フラガ&クルーゼ「?」
 アスラン「『絶対に来るな! 来たら絶交だ!』ってカガリに言われてるんです」
 フラガ「? どうして来ちゃダメなんだ?」
 アスラン「劇の内容に関係しているみたいですけど、何も教えてくれませんでした。それで、ど
       うしようかと迷って…」
 クルーゼ「ほう、そうか。運が悪かったな、アスラン」
 アスラン「えっ?」

 (フラガがアスランの手をがっちりと掴み、体育館に引っ張っていく)

 クルーゼ「あのお祭り男に、そんな面白そうな話をするとは……。運が悪い、というより、迂闊
       な男だな、アスラン・ザラ」(と言いつつ、クルーゼも体育館に向かう)


その5.おいおい

 (体育館は大盛況。いよいよキラたちのクラスの劇が始まる)
 アスラン「まったく、フラガ先生もクルーゼ先生も強引なんだから…」
 フラガ「まあいいじゃないか。お、始まるぞ」

 (開幕。主役の下級騎士、男装したカガリ登場。女生徒たちから黄色い声援)

 アスラン「カガリ……」
 クルーゼ「なるほど。カガリ君は男装を見られたくなかったのか」
 フラガ「けど、そんなに気にするほどの事でもないだろ? 宝塚みたいで、結構似合ってるぞ」
 クルーゼ「似合っているからこそ、だろう。女心は複雑なものだ」

 (姫、登場。会場を静寂が包む。続いて歓声(女子)と爆笑(男子))

 フラガ「………………………………………………」
 アスラン「………………キラ?」
 クルーゼ「似合いすぎだな、あれは」(後で売るため、こっそり隠しカメラで撮っている)
 
 
その6.バカップルがまた1つ

 (劇は大好評で終演。その後、アスランは校舎の外れにカガリを連れ出す)
 カガリ「………………劇、見てたんだ、アスラン」
 アスラン「ああ。約束を破って、済まない。けど、絶交される前に聞いておきたいんだ。どうして
       俺が来るのをあんなに拒んだんだ? 男装を見られるのが嫌だったのか?」
 カガリ「それもあるよ。ちょっと恥ずかしかったからね。けど……」
 アスラン「けど?」
 カガリ「見られたくなかったのは、あたしじゃなくて、キラなんだ」
 アスラン「キラを?」
 カガリ「だって…………。キラって、あたしよりドレスとか似合ってて、けどあたしは男物の服な
      んか着て、全然可愛くなくて……。男のキラの方が、女のあたしより可愛いなんて、ち
      ょっと悔しくて……」

 (アスラン、苦笑した後、カガリを抱きしめる)

 カガリ「! ア、アスラン?」
 アスラン「可愛いよ、カガリは。キラよりも、誰よりもね」
 カガリ「アスラン……」

 (抱き合う二人。物陰から、二人を見つめる幾多の目)

 ラクス「(小声で)うふふ……。お二人共、すっかり仲良くなられて」
 ミリィ「ホント、お似合いよね」
 サイ「おい、そろそろ行こう。人の恋路を邪魔する奴は…」
 イザーク「馬に蹴られて地獄に落ちろ、か? ふん、分かってるさ」
 ニコル「? どうかしましたか、キラ?」
 キラ「…………ねえ、僕ってそんなに女装が似合ってるの?」
 他一同「え、えーと………………」(答に詰まる)
 ラクス「大丈夫ですわ。女装しててもキラは素敵ですわ」
 キラ「…………そうか。うん、ありがとう、ラクス」
 他一同「いや、いいのか、それで?」


その7.やっぱりオチはこの御方に

 (文化祭終了。校舎のあちこちで打ち上げパーティーが行われている)
 イザーク「ふん、やっと文化祭も終わりか。稽古は大変だったけど、割と楽しかったな」

 (体育館の扉を開けるイザーク)

 イザーク『ん? 誰か舞台の上にいるぞ。顔は見えんな。俺たちの劇で使った、お姫様の衣装
       など着て、何をして……。! ははーん、キラだな? さっきラクスに「女装も似合う」
       なんて言われたから、その気になって……。ちょっとからかってやるか』

 (そっと忍び寄り、背後からお姫様に抱きつく)

 お姫様「!!!!!!!!!」
 イザーク「はーっははははははは! 見たぞ、キラ! 貴様は今日からSEED学園の恐怖!
       女装男として…………あれ? 胸が……ある?」
 フレイ「こ……の……ドスケベーーーーーーっ!」
 イザーク「おごぉっ!」

 (張り倒されるイザーク)

 イザーク「フ、フレイ! どうしてお前がそんな服を?」
 フレイ「私が女物の服を着て、悪い? それとも、お姫様の服なんて、私に似合わないって言
      うの? 悪かったわねえ、似合ってなくて! このチカン!」
 イザーク「ち、違う! 誤解だ、これは不幸な事故だ!」
 フレイ「黙れ! この、女の敵がーーーーーーーーーーーっ!」

 (フレイの体が黄金に輝く)

 イザーク「ま、待て! 怒りのスーパーモードは自滅への第一歩だぞ! 心を落ち着けて、明
       鏡止水の境地で……」
 フレイ「ご心配なく。私の気持ちは穏やかよ。見える、見えるわ………。チカン男の、血の一 
     滴(ひとしずく)!」
 イザーク「!!!!!!!!!!!!!」

 (惨劇……)



ショート06.
お見舞いに行こう!

その1.ムウ・ラ・フラガ、愛に生きる教師

 (月曜、朝のHR。フラガが出席をとっている)
 フラガ「よし、出席終わり。なお、今日はキラ・ヤマトとラクス・クラインは欠席だ。アスラン、二 
      人に今日の分のプリントを届けてくれ」
アスラン「はい。先生、二人はどうして休んでるんですか?」
 フラガ「ラクスは風邪を引いたらしい。日曜日から寝込んでいるそうだ」
 アスラン「キラは?」
 フラガ「昨日からラクスの看病。気になって授業どころじゃないので、休むとさ」
 アスラン「…………いいんですか? そんなの認めて」
 フラガ「アスラン、愛する女を放って授業を受けろなんて、俺の口から言えると思うか? 俺だ
      ってもし、マリューが風邪なんか引いたら、学校なんて休むぞ!」
アスラン「人としては正しいですけど、教師としては激しく間違ってます」


その2.さすが幼馴染です

 (放課後、いつもの面子でクライン邸にお見舞いに来ました)
 カガリ「アスラン、お見舞いの品、ちょっと多くないか?」
 アスラン「いや、恐らくこれぐらいでいい」
 カガリ「?」

 (呼び鈴を鳴らすと、玄関の戸が開かれる)

 ラクス「皆様、いらっしゃいませ」
 アスラン「ラクス?」
 フレイ「ちょっとあんた、風邪引いてるんじゃないの!? 寝てなきゃダメじゃない!」
 ラクス「大丈夫ですわ。熱も大分引きましたから。お上がりになってください」

 (一同、クライン邸の中に)

 ミリィ「相変わらず、大きな家ね」
 イザーク「ふん。金持ちの悪趣味丸出しだな」
 ニコル「僻みはみっともないですよ、イザーク。ところでラクスさん、キラはどうしたんですか?」
 ラクス「ああ、キラでしたら……」

 (ラクス、自分の部屋のドアを開ける)

 一同「………………………………」

 (真っ赤な顔をしたキラが、ラクスのベッドで寝込んでいる)

 ラクス「キラが一晩中看病してくれたおかげで、私の風邪は大分治りましたけど、今度はキラ 
      に風邪がうつったみたいですわ」
 アスラン「お見舞いの品、二人分用意しておいて正解だったな」


その3.あえてノーコメント

 (翌日、学校。朝のHR)
 フラガ「うーん……。キラとラクスが一日で復帰したのに、今度はアスランたちがダウンか。み
      んな、風邪には注意しろよ」
 キラ『病人が二人もいる中で三時間近くも駄弁ってたら、風邪もうつるよな……。けど』
 イザーク「? 何だ?」
 キラ「いや、イザークは元気だな、と思って…」
 イザーク「当たり前だ。鍛え方が違う! 自慢じゃないが、俺は生まれてこの方、風邪など引 
       いた事が無い! ハハハハハハハッ!」
 キラ「……………」
 (色々言いたい事はあるのだが、口にすれば友情を失うので、何も言わない)



ショート07.
学園モノなのに、今まで一度もマトモな授業の様子書いた事が
なかったな。という訳で、今回はフラガクラスの授業風景を覗い
てみよう(長いタイトルだ)

その1.語学(担当はクルーゼ)

 キラ「ねえ、アスラン」
 アスラン「ん?」
 キラ「前から気になってたんだけどさ……」
 アスラン「何だ?」
 キラ「僕たちって、何語で喋ってるんだろう?」


その2.数学(担当はナタル)

 ノイマン「えー、バジルール先生は急病のため、本日はお休みだ。代わりに小テストを用意し 
       たので、やっておくように」
 カガリ「(小声で)ナタル先生、休んでるのか。そういえば、去年も今頃の時期に休んでたな」
 キラ「風邪を引きやすい体質なのかな?」
 サイ「でも、夏休み前にもよく休んでたぞ」
 ラクス「あの方、夏と冬はお忙しくなられるそうですから」
 キラ「? ラクス、それ、どういう意味?」
 ラクス「さあ、どういう意味でしょう」(ニッコリ微笑む)


その3.化学(担当はマリュー)

 イザーク「……………」(フラスコやビーカーを怪しげな目で見ている)
 ディアッカ「イザーク、気持ちは分かるが、それはやめておけ。一応、授業中だしな」
 イザーク「ちっ」
 (こっそり持ってきたインスタントラーメンの袋を隠す)


その4.体育(担当はフラガ)

 トール「ったく、この時間の体育は地獄だな……」
 ディアッカ「ああ、腹が減って力が出ない……」
 イザーク「ふん、だらしが無い! 空腹など根性でカバーしろ!」
 キラ「無茶言うなよ……」
 フラガ「ほう、元気だな、イザークは」
 イザーク「はっははははは! 鍛え方が違いますよ!」
 フラガ「早弁もしたしな」
 イザーク「ええ! 授業中、こっそり食べる弁当の味はまた格別………あ」
 フレイ「バカね」
 (イザーク、放課後居残り決定)


その5.歴史学(担当はバルトフェルド)

 バルトフェルド「…………今上げた例でも分かるように、先進国による未開地域の植民地化 
          は当時の常識だった。支配される方にとってはたまらんがな。それから…」
 キラ『バルトフェルド先生って、結構真面目なんだよな。授業も分かりやすいし、いい先生なん
     だけど……』

 (突然、教室のドアが開く)

 アイシャ「アンディ〜〜〜。オイシイコーヒー、入レタヨ」
 バルトフェルド「お、そうか。よし、ではここでコーヒーブレイクだ。人間、適度な休憩は必要だ 
           からな」
キラ『…………この人がクビにならないのは、SEED学園七不思議の1つだな』


その6.男子は機械工学(担当はマードック)
     女子は家庭科(担当はキラのお母さん)

 (家庭科室。オリジナルドレス製作の最終日)
 ミリィ「……よし! これで完成!」
 ラクス「素敵なドレスができましたわね」
 フレイ「そうね。苦労した甲斐があったわ」
 カガリ「ああ。……けどラクス、この服、あたしらが着るにはちょっとサイズが大きくないか?」
 ラクス「いいえ、ピッタリですわ。きっとあの方によく似合いますわ」

 (機械工学室)
 キラ「!?」
 アスラン「どうした、キラ?」
 キラ「いや、ちょっと寒気が……」


その7.放課後の帰り道(イザークは居残り説教食らってます)

 キラ「もうすぐ中等部も卒業か……。あっという間の三年間だったな」
 アスラン「卒業、と言っても、実感が沸かないな。みんな高等部へ進学するんだから、離れ離 
       れになるわけじゃないし」
 カガリ「けど、部活を辞める時は、ちょっとジーンと来たよ。後輩たちは『後は私たちに任せてく
     ださい』って言ってたけど、やっぱり心配だよ。いや、信じてない訳じゃないんだけどね」
 ニコル「そうですね。特にキラやアスランは頑張りましたから。偉大な先輩の後を受け継ぐ後 
      輩たちは、凄いプレッシャーを感じてるでしょうね」
 ラクス「大丈夫ですわ。後輩の方たちも立派な方が揃ってますもの。特に錬金術部の方たち 
      は人気も実力も兼ね備えていますから、きっと新しい栄光を掴んでくれるでしょう」
 キラ「? ラクス、うちの学校にそんな部、あった?」
 ラクス「さあ? どうでしょう?」(謎めいた微笑み)



ショート08.
それぞれの年末年始(クリスマスからお正月まで)

その1.キラの場合

 クリスマス……ラクスと甘い一時を過ごす。プレゼントは、動物のぬいぐるみを送りました。
 大晦日……コタツに入って、家族と一緒にまったりと。
 初詣……アスランを除くいつものメンバーと一緒に神社へ行く。が、どさくさに紛れてラクスと 
       脱走。そのまま初デートへ。
 お年玉の成果……両親、シーゲル、あと近所の奥様方やお姉様たちからも貰う。正月早々 
             モテモテだが、その成果は全て、ご機嫌斜めになったラクスへのプレゼン
             トに使われた。

 アスラン「見事なまでにラクス中心の生活だな」
 キラ「そうみたいだね。全然自覚無かった」
 アスラン「それで、ラクスへのお詫びのプレゼントは、何を送ったんだ?」
 キラ「『マスコットロボ・ハロ』の十体セット」
 アスラン「………………」


その2.アスランの場合

 クリスマス……国内から海外まで、父親の所要であちこち引っ張り回される。
 大晦日……父親の仕事に付き合い、海外へ。
 初詣……海外の教会でミサ。
 お年玉の成果……上々。このメンバーの中では、一番多く貰っている。

 キラ「でも、年末年始、カガリをほったらかしだね。かなり怒ってるんじゃないかな?」
 ラクス「弁解の電話も無視されているそうですわ。新学期早々、カガリ様のナイスタックルを見
      れるかもしれませんわね」


その3.ラクスの場合

 クリスマス……キラと一緒。
 大晦日……来年からの芸能活動に向けての打ち合わせ。
 初詣……キラと一緒。
 お年玉の成果……上々。銀行には預けず、自宅の隠し金庫に貯金。

 キラ「隠し金庫!?」
 ラクス「お父様がおっしゃられるには、マルサという人類の敵に対抗するために必要だそうで 
      すわ。キラの家にはありませんの?」
 キラ「…………」


その4.カガリの場合

 クリスマス……アスランと一緒に過ごそうと思ったのだが、連絡が着かず。
 大晦日……上と同じ。
 初詣……上と同じ。タックルの練習を始める。
 お年玉の成果……まあまあ。

 カガリ「アスラン……。新学期が待ち遠しいね。ふふ、ふふふふふ……」
 アスラン(アスハ家の玄関前で)「カガリーーッ! 俺が悪かった! せめて事情を説明させて
                     くれーーーっ!」
 カガリ「ふふ、ふふふふふ……」
 (怒りで頭に血が上って、外の声が聞こえていない。カガリの父ウズミ、アスランに海外逃亡を
  勧める)


その5.フレイの場合

 クリスマス……父親と一緒に過ごす。が、食事に行ったレストランでイザークと遭遇。些細な口
          論から大ゲンカとなる。
 大晦日……父親と一緒に紅白歌合戦を見ていたが、ふとイザークの顔を思い出し、気分悪 
         化。そのまま元旦を向かえ、さらに気分悪化。
 初詣……新年の挨拶後、イザークを張り倒す。
 お年玉の成果……まあまあ。

 イザーク「って、ちょっと待てコラ! お前の年末年始は俺の事しか考えてないのか!」
 フレイ「ええ、そうよ! 寝ても覚めてもあんたの顔が思い浮かんで、全然落ち着かなかった 
      のよ!」

 (で、またも大ゲンカ)

 ミリィ「あの二人、会話の内容だけ聞くと、結構ラブラブカップルなんだけど……」
 ニコル「やっぱり、ちょっと無理がありますね」
 サイ「あらゆる意味でな」


その6.ミリアリアの場合

 クリスマス……トールとディアッカから同時にデートに誘われる。が、結局どちらか選べず、い
          つものように三人で行動。
 大晦日……トールとディアッカから「一緒に紅白見よう」と誘われるが、結局どちらか選べず、
        家族と一緒に過ごす。
 初詣……いつものメンバーで初詣に行く。その後、トールとディアッカから「これから一緒にデ
       ートしよう」と誘われる。が、結局どちらか選べず、いつものように三人で行動。
 お年玉の成果……平均レベル。

 ミリィ「…………もしかして私って、凄い悪女?」
 ラクス「恋愛では、はっきりしないのも罪ですわね」


その7.イザークの場合

 クリスマス……母親と一緒にショッピングに出かける。が、途中でフレイと遭遇、大ゲンカとな
          る。
 大晦日……新作のテレビゲームに熱中。気が付けば初日の出が上がっていた。最悪の年明
         け(笑)。
 初詣……なぜかフレイに張り倒される。その後、神社でフレイの呪殺を祈願する。が、フレイ 
       が軽い風邪を引いたら、顔を青くして、呪殺祈願を取り下げるべく、神社に押しかけ
       る。神主さん、大弱り。
 お年玉の成果……まあまあ。あと、偶然会ったフレイの父親から「娘の無礼のお詫び」として、
             ちょっと多めのお年玉を貰う。これでフレイへの恨みは忘れた。

 キラ「あの二人って、相性がいいのか悪いのか、よく分からないな」
 ラクス「本編では、結局くっつきませんでしたけどね」


その8.サイの場合

 クリスマス……家族と一緒に過ごす。クリスマスケーキを堪能。
 大晦日……紅白歌合戦を見る。白組を応援。勝利。ちょっと嬉しい。
 初詣……みんなと一緒に神社へ。友達や家族の健康と、一年の平和を願う。
 お年玉の成果……平均レベル。

 サイ「? どうしてみんな、そんなに羨ましそうな顔で見るんだ? 普通の年末年始だろう?」
 ラクス「宝の価値を知らぬは本人ばかりなり、ですわ」


その9.そして新学期

 ニコル「あれ? 今、空を飛んでいった人って…………アスラン?」



ショート09.
少女たちの戦場

その1.第一の標的−キラ・ヤマト

 ジュリ(アストレイ三人娘の一人、メガネっ娘)
     「えー! アサギ、あんた、キラ君にチョコあげるの?」
 アサギ(三人娘の一人、金髪の少女)
     「う、うん、この前、不良に絡まれていたところを助けてもらったから、そのお礼に…」
 マユラ(三人娘の一人、黒髪の少女)
     「まあ、誰を好きになっても、あんたの自由だけどさ、あの人は、ちょっと無理だと思う 
      わよ。ハードル高すぎ」
 アサギ「分かってるわよ。キラ君、モテるから。頭良いし、優しいし、スポーツも凄いし…」
 マユリ「そういう意味じゃないの」
 アサギ「えっ?」
 ジュリ「アサギ、あんた、次期高等部生徒会長を敵に回す度胸ある?」
 アサギ「う」
 (という訳で、キラの成果はラクスからの一個のみ)


その2.第二の標的−アスラン・ザラ

 ジュリ「チョコを送るなら、キラ君よりアスラン君の方がいいわよ」
 アサギ「そう? カガリ様も怒らせたら怖いわよ」
 マユラ「ううん、こういう場合、怒られるのは私たちじゃなくて、チョコを受け取ったアスラン君 
      よ」
 ジュリ「そうそう。少なくとも、私たちは安全だわ」
 マユラ「アスラン君、プレゼントって絶対断らないし」
 ジュリ「優しいからねー」
 マユラ「そしてまた、カガリ様にタックルされるのね」
 ジュリ「今度はどれくらいの高さまで飛ばされるのかな? 楽しみよねー」
 アサギ「……何か、主旨変わってない?」
 (その後、ジュリとマユラは計画を実行しました。アスラン、地獄開始)


その3.第三の標的−まとめて行きます

 ジュリ「サイ君なんかどう? 彼女いないし、性格いいし」
 マユラ「うーん、ちょっと決め手に欠けるわね」
 ジュリ「じゃあイザーク君は?」
 マユラ「悪くはないけど……。彼氏にすると、ちょっと疲れそうじゃない? いろんな意味で」
 ジュリ「フラガ先生は?」
 マユラ「物理と化学の成績、1になりたい?」
 ジュリ「カズイ君は?」
 マユラ「いくら何でも、それは酷いよ。それよりもさ…」
 アサギ「あのー…………。盛り上がってるところ悪いんだけど、チョコを送るのは私…」

 (結局、チョコは自分で食べましたとさ)
 アサギ「うう……。友達は選んだ方がいいかも……」



ショート10.
中等部卒業式

その1.生徒たちの卒業

 キラ「今日で中等部ともお別れか……。思えば色々な事があったなあ……」
 ラクス「そうですわね。わたくしとキラが出会ったのも、この中等部でしたわ」
 アスラン「俺とカガリが会ったのもな」
 カガリ「ア、アスラン! まあ、確かにそのとおりだけど…」
 サイ「ザフト学園と合併するって聞いた時は、どうなる事かと思ったけど、みんないい奴ばかり
    で安心したよ」
 ニコル「それは僕たちもですよ。高等部に行っても、一緒に頑張りましょうね」
 ディアッカ「そうだな。けど、仲良くする前に、高等部では、俺たちの関係にも決着を着けないと
        な」
 トール「ああ、望むところだ」
 ミリィ「そうよね、私もそろそろ結論を出さないと…」
 カズイ「はあ……。高等部に行っても、僕は地味なままなのかな…」
 イザーク「見てろ! 高等部でこそ、俺がナンバー1になってやる! キラからサッカー部のエ
       ースの座を奪い取り、SEED学園にイザーク・ジュールありと知らしめてやる!」
 フレイ「出来もしない事を語って、恥ずかしくないの?」
 イザーク「な、何だと貴様!」
 フレイ「何よ」
 キラ「卒業式なのに、全然しんみりとしないなあ…」
 ラクス「このメンバーでしんみりするなんて、無理ですわ。楽しく仲良く賑やかに。それがわたく
      したちのスローガンですし」
 他一同「えっ、そうだったの?」
 キラ「あ、けどピッタリだね」
 ラクス「ええ。それでは皆様、高等部編でもよろしくお願いします」


その2.教師たちの卒業……?

 フラガ「ふう、終わった終わった。これで俺たちもお役御免と…」
 クルーゼ「そうはいかないらしいぞ、ムウ・ラ・フラガ」
 フラガ「ん?」
 クルーゼ「先ほどシーゲル学園長とパトリック理事長、そしてウズミ教頭から、私たち全員の 
       高等部への編入が言い渡された」
 フラガ「なっ!」
 クルーゼ「今年の中等部の卒業生たちは、優秀だが問題児揃いだからな。連中を管理できる
       のは、彼らと一年間付き合ってきた私たちしかいない。よろしく頼む、とな」
 マリュー「あらあら……」
 ナタル「賢明と言えば、賢明な判断ですね」
 バルトフェルド「失業手当が出るのは当分先か。では、これからもよろしく、と」
 フラガ「くっ……。何て事だ…」
 クルーゼ「フラガ?」
 フラガ「これからは誰の目も気にする事無く、マリューとイチャイチャできると思ったのに!」
 マリュー「フ、フラガ先生!」
 バルトフェルド「今もしてるじゃないか」
 フラガ「ふっ……。俺をナメてもらっちゃ困る。あんなのはただのスキンシップだ。俺が本気に
      なれば、このコーナーを15禁、いや18禁にする事も可能だ」
 バルトフェルド「ほう。そうなれば私も黙っていないぞ。アイシャと一緒に色々と…」
 ナタル「クルーゼ主任。高等部では、『教師』の風紀も取り締まる部署も設立すべきだと思いま
      す」
 クルーゼ「許可しよう。このSSコーナーの存続のためにもな」

(中等部編 完)

HPトップページに戻る
「創作ギャラリー」トップページに戻る