ファンタジー編 PHASE−05
ショート44.
武術大会・まずは予選です

その1.いきなり夢の対決?

 カガリ「まずはトーナメント式の予選か。本選に勝ち残れるのはたった八人……。厳しいな」
 アスラン「組み合わせを見たが、予選では仲間同士では戦わない。三人とも勝ち残って見せる
       さ」
 カガリ「ああ、頑張れ、アスラン。イザークとディアッカもな」
 イザーク「おう」
 ディアッカ「任せな。一番に本選出場を決めてやるぜ。えーと、俺の相手は…」
 ギアボルト「よろしくお願いします」
 ディアッカ「ギブアップ。女の子とは戦えないぜ」
 カガリ「早っ!」
 アスラン「脱落一番乗りか。ディアッカらしいが」
 ディアッカ「可愛い女の子とは戦わない。これが俺の正義だ」
 イザーク「自慢げに言うな」
 ギアボルト「うちの上司並のバカですね。世界は広いです」


その2.結果が全てです

 ルナマリア「アスランパーティーはディアッカが予選落ちしたけど、アスランとイザークは余裕で
        勝ち上がり、本選出場を決めたそうよ」
 ステラ「レイも決めた……。あとはシンだけ。この試合に勝てばシンも本選へ行ける」
 シン「絶対に勝つ! うおおおおおおっ!!」
 レイ「ほう、シンの奴、燃えているな。相手は防戦一方だ」
 ステラ「うん、ステラにも炎が見える。シンの体、メラメラ燃えている。凄い闘志……」
 ルナマリア「あれは闘志の表現じゃなくて本当に燃えているのよ! シンの相手、火炎魔法は
        反則よ!」

 (シン、反則勝ちで決勝進出)

 シン「服が黒焦げ……。カッコよく決めたかったのに……」
 レイ「これもお前の宿命なんだろう。気にするな」
 シン「ちくしょーっ!」


その3.ニコル、盛り上げます

 ガーネット「は、こっちは力を封じているのに、手ごたえが無いわね」
 ニコル「さすがはガーネットさん。本選でも頑張ってください」
 ガーネット「ニコルも次勝てば本選なんでしょ? 負けるんじゃないわよ」
 ニコル「ええ、そのつもりです。僕の相手は……おや、知ってる顔ですね。どうも、お久しぶりで
      す」
 アヤセ「げっ。ニ、ニコル……様」
 ニコル「アヤセさん、どうしてこんな所にいるんですか? ああ、僕とガーネットさんの後を追っ
      てきたんですね。もしかしてギアボルトさんも来ているんですか?」
 アヤセ「は、はい」
 ニコル「そうですか……。すいません、審判さん。僕、ギブアップします」
 アヤセ「えっ!? ニ、ニコル様、どうして?」
 ニコル「貴方とギアボルトさんの戦いを見てみたくなったんです。頑張ってください」
 アヤセ「ニコル様……。ありがとうございます! ふふっ、ニコル様のお墨付きを貰ったわ。こ 
      れで遠慮なくあの女を!」

 ガーネット「ニコル、どういうつもり?」
 ニコル「面白い戦いを見たくなっただけです。それに、今更だけどガーネットさんを殴るのも殴 
      られるのも嫌ですから」
 ガーネット「ニコル……」
 ニコル「本選が楽しみですね。色々な意味で。ふふっ」


その4.二人の武器はなぜか刀

 スティング「ふっ。まさかお前とやり合う事になるとはな」
 アウル「俺は嬉しいぜ。スティングとは一度マジで戦ってみたかったからな」
 スティング「そうか。じゃあ遠慮なく……」
 アウル「天鎖斬月!」
 スティング「軋れ!」
 ギアボルト「こらそこ、BLEACHネタは禁止。審判、このバカ二人は失格にしてください。我が
         軍の恥さらしです」
 二人「えー! そりゃないぜ、もっと出番を!」
 ギアボルト「黙りなさい。私はパロディネタは嫌いなんです」
 アヤセ「ワガママね」



ショート45.
武術大会・組み合わせ決定

 カガリ「本選に出場する八人と、その組み合わせが決まったか。どれどれ…」

 第一試合 イザークvsアヤセ
 第二試合 ギアボルトvsレイ
 第三試合 アスランvs武闘家バリー(前回の優勝者)
 第四試合 ガネット(ガーネットの偽名)vsシン

 カガリ「どの試合も好カードだな。試合が楽しみだ」
 アスラン「俺の相手は前回の優勝者か。手強そうだな」
 カガリ「大丈夫だ、アスラン。『前回優勝者はあっさり負ける』というのは世界の法則だからな」
 アスラン「いや、それはバトルマンガの法則で、通じないマンガも多いんだが」



ショート46.
一回戦第一試合、戦士イザークvs魔族アヤセ

 イザーク「女が相手とはいえ手加減はせん。行くぞ!」
 アヤセ「手加減なんかしたら、あんたが負けるわよ。私の剣を受けろ!」
 イザーク「むっ、なかなかやるな。だがっ!」
 アヤセ「ふん。力任せの剣なんて!」
 カガリ「あのアヤセという女戦士、やるな。イザークと互角に戦うなんて」
 ディアッカ「パワータイプのイザークと違って、手数とスピードで戦うタイプか。イザークとの相性
        は最悪だな」
 アスラン「だがイザークも相手の攻撃をかわしている。実力的にはほぼ互角だ。この勝負、一
       瞬でも隙を作った方が負けだ」
 イザーク「ちっ、チョコマカと動いて……。だが、貴様の動きはもう見切った。これで終わりにし
       てやる!」
 アヤセ「く、何て気迫……! ダメ、受け切れない……」
 ニコル「アヤセさーん、ここで負けたら永遠に22位ですよー」
 アヤセ「!!!! う、うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 イザーク「な、何!? うわあああああ!」

 ニコル「ガーネットさん、アヤセさんが勝ちましたよ。僕の応援が届いたのかな?」
 ガーネット「応援だったの? 私には闘犬を焚きつける声に聞こえたんだけど。ま、いいか。面
        白くなりそうだし」



ショート47.
一回戦第二試合、魔族ギアボルトvs剣士レイ

 ギアボルト「まさかあのバカ女が勝つとは思いませんでした。私も負けてられませんね」
 レイ「悪いが勝つのは俺だ。我が剣の前に散るがいい」
 ギアボルト「決め台詞のつもりですか? どこかで聞いたようなセリフですね。オリジナリティが
        ありません」
 レイ「それは俺にではなく作者に言え。君の武器は鎌か。そんな扱いにくい武器で、よくここま 
    で勝ち上がってきたものだ」
 ギアボルト「私もそう思います。でも、私の上司がこの武器しか使ってはダメだと言うのです。可
        愛い女の子には大鎌&死神ルックがよく似合う、と」
 レイ「変わった趣味をした上司だな」
 ギアボルト「はい。今度は私たちにメイド服を着せるつもりのようで、その為の予算を編成して
         いました」
 レイ「コスプレ趣味の上司か。男の本能全開だな」
 ギアボルト「一応女性なんですけどね。しかも年下の彼氏持ち」
 レイ「…………世の中は不思議に満ちているな」
 ギアボルト「まったくです」

 シン「あの二人、切り合いしながら何か話しているみたいだな。何て言っているんだろう?」
 ルナマリア「ここからじゃ遠くて聞こえないわ。あ、レイが膝をついた」
 ステラ「レイの負け……。レイが剣で負けるなんて珍しい。あの女の子、そんなに強かった?」
 レイ「いや、剣技では互角だった。だが人生経験で負けた。宮仕えは辛いな」
 シン「はあ?」



ショート48.
一回戦第三試合、勇者アスランvs武闘家バリー

その1.原作バージョンだったら良かったのにね

 カガリ「アスランの相手は前回の優勝者か……。手強そうだな」
 ディアッカ「マジで強いらしいぜ。この付近のモンスターを悉く倒した、『拳神』と呼ばれるほどの
        凄腕なんだとよ」
 イザーク「世話になったこの町を守る為に戦っているそうだ。義理堅い男だな」

 バリー「アスラン、君の噂は耳にしている。お手柔らかにな」
 アスラン「こちらこそ、『拳神』と手合わせできるとは光栄です。全力で戦わせてもらいます」
 バリー「うむ。お互いに正々堂々、ベストを尽くそう」

 イザーク「お、いよいよ始まるな」
 ディアッカ「いや、試合開始前にイベントをやるらしい。前回優勝者のバリーと、それに挑む勇 
        敢な戦士に花束をプレゼントするんだとよ。ちぇっ、アスランの奴、運がいいぜ」
 イザーク「花束を持ってきたあの女は誰だ?」
 カガリ「ミーア・キャンベル。最近評判の歌姫だ。キラ達が歌を聞いた事があるそうだけど…」

 ミーア「バリーさん、頑張ってください」
 バリー「あ、ああ、うむ」
 ミーア「アスランさんも……」
 アスラン「ああ、全力を出して戦うつもりだ。ん? ミーアさん、どうかしたんですか? ボーッと
       して。俺の顔に何か?」
 ミーア「…………カッコいい」
 アスラン「えっ?」
 ミーア「頑張ってください! 私、全身全霊で応援しますから! 必ず勝ってくださいね!」
 アスラン「えっ、あ、あの、ミーアさん?」
 ミーア「『さん』づけなんてしないで、ミーアって呼んでください。あー、もう、素敵!」
 アスラン「いや、君、あの、ちょっと」
 バリー「アスラン……」
 アスラン「バ、バリーさん、あの、すいません。でもどうしたんですか、無茶苦茶怒っているよう 
       に見えるんですが」
 バリー「ふっ。説明していなかったが、私は原作バージョンのバリーではなく、鏡伝2バージョン
      のバリーなんだ」
 アスラン「えっ。えーと、確か鏡伝2のバリーさんは整形していないミーアと……ああ! いや、
       これは、その、あのですね」
 バリー「アスラン、覚悟はいいかな?」
 アスラン「全然良くない! そもそもこっちのミーアは整形してるじゃないですか!」
 バリー「外見は関係ない。私は彼女の『心』に挽かれたのだ」
 アスラン「それは素晴らしいけど、やっぱり何か間違っている!」
 ミーア「アスラーン、頑張ってくださーい♪」


その2.一蹴!

 イザーク「アスランの奴、バリーの猛攻に手も足も出ないようだな。剣も砕かれ、逃げるのが精
       一杯か」
 ディアッカ「いや、よくやってると思うぜ。ブチギレモードのバリー相手にここまで持ち堪えている
        んだからな。カガリ、応援しないのか?」
 カガリ「知らん。あんな女たらし、さっさと負ければいいんだ!」
 ディアッカ「こっちもブチギレモードかよ。あ、会場の隅に追い詰められたか。さて、どうする、ア
        スラン?」

 バリー「ふふふ、もう逃げ場は無いぞ、アスラン。大人しく私の拳によって砕け散りたまえ」
 アスラン「……断る! 俺はまだ、死ぬわけにはいかない!」
 バリー「往生際が悪いな。覚悟!」
 アスラン「これを待っていた! 行くぞ!」
 バリー「何!?」

 ディアッカ「あのタイミングで、しかも蹴りでカウンターを決めたか。やるねえ、アスラン。グゥレ 
        イト!」
 イザーク「普段のバリーならあんなカウンターには引っかからなかっただろう。頭に血が上って
       冷静さを失い、その結果がこれか。やはり戦いはクールにやるべきだな」
 ディアッカ「俺もクールに戦ったぜ」
 イザーク「貴様はそれ以前の問題だろうが。このバカフェミニストが」


その3.試合の終わり、死合の始まり

 カガリ「アスラン……やったな」
 アスラン「カガリ、すまない、その、心配をかけて。だが…」
 ミーア「アスラーン!」
 アスラン「うわっ! ちょっ、ちょっと待ってくれ、ミーア、いきなり抱きつかないで…」
 ミーア「アスランってカッコいい上に強いのね。決めた、私、今日からアスランの恋人になる!」
 アスラン「ええっ!? いや、そんな事を勝手に…」
 カガリ「アスラン」
 アスラン「!」
 カガリ「話したい事がある。後で宿に来い。必ず、だ」
 アスラン「イ、イエッサー!」
 ミーア「? アスランのパーティーのリーダーって、勇者のアスランじゃないの? 変わっている
      わね」



ショート49.
一回戦第四試合、戦士ガネット(偽名)vs勇者シン

 シン「ぐはっ!」
 ガーネット「あらあら、もうダウン? こっちは半分の力も出してないのよ」
 シン「ぐっ、こ、この女、強すぎる……」
 アヤセ「あのボーヤ、手も足も出ないみたいね」
 ギアボルト「当然です。魔力を封じているとはいえ、ガーネットは魔王の一人。身体能力だけで
         も人間を遥かに上回っています。一対一で勝てる人間など、この世にいません」
 アヤセ「さすが、魔王の称号は伊達じゃないわね」
 ギアボルト「ええ。もっとも不安はありますが」
 アヤセ「不安? それって……あ、そろそろ決めるみたいよ」
 ガーネット「これで終わりにしてあげる。覚悟しなさ…あ、あら? 体に力が入らない。ど、どうし
        て?」
 シン「今だ! はああああああっ!」
 ガーネット「あ痛っ!」

 アヤセ「ガ、ガーネット様が負けちゃった……。どうして? 実力では圧倒的に上だったのに」
 ギアボルト「答えは簡単です。あの女の日常を思い出してください」
 アヤセ「日常? えーと、朝起きて、ニコルといちゃついて、朝食を食べて、軽く仕事をして、ニ
      コルとイチャついて、昼食を食べて、昼寝して、ニコルとイチャついて、夕食を食べて、
      ニコルとイチャついて、そして就寝……」
 ギアボルト「そんな自堕落な生活をしていたら体力が落ちるのは当然です。魔力のサポートが
        無ければ尚更ですね」
 アヤセ「魔王って、実はダメ人間の一歩手前なのね。本気で新しい就職先を探そうかなあ」



ショート50.
準決勝第一試合、アヤセvsギアボルト

その1.忘れがちですがガーネットとニコルって、『魔王とその側近』なんですよね

 ガーネット「うー、ニコル、負けちゃったよ〜。悔しい〜」
 ニコル「泣かないでください、ガーネットさん。ほら、もうすぐ準決勝が始まりますよ。アヤセさん
      とギアボルトさんの対戦です。どっちが勝つと思いますか?」
 ガーネット「そうねえ。はっきり言って分からないわ。あの二人、実力はほぼ互角だから。人気
        ならギアちゃんが圧倒的に上回っているんだけどね」
 ニコル「そうですね。アヤセさんの人気がギアボルトさんを超えるなんて考えられません」
 ガーネット「でもバトルなら分からないわ。頑張りなさい、アヤセ。骨は拾ってあげるから」
 ニコル「頑張ってください、アヤセさん。人気投票では22位でも、あなたの実力は本物ですか 
      ら」
 アヤセ「外野、うるさい!」
 ギアボルト「でも事実ですよ。『実力は本物』という点を除いて」
 アヤセ「ふ、ふふふふ……。あんたってホント、私を怒らせるのが上手いわね」
 ギアボルト「単にあなたがキレやすいだけです。カルシウムの大量摂取をお勧めします」
 アヤセ「うるさい、死ね!」
 ギアボルト「あなたが死んでください。いえ、私が殺してあげます」
 ガーネット「うーん、いい具合にヒートアップしてるわね」
 ニコル「ええ。本当に面白い試合になりそうです」


その2.ライバル宣言は両刃の剣

 ギアボルト「自分の部下に殺し合いをさせて楽しむなんて、私たちの上司は性格悪いですね。
        いえ、それでこそ魔王ですが」
 アヤセ「はあああああああっ! はっ、ふっ、ふん!」
 ギアボルト「いい連撃です。あなたを褒めるのは気が進みませんが、私と互角の実力者だとい
         うのは認めざるを得ませんね」
 アヤセ「余裕かましているんじゃないわよ! これで終わり!」
 ギアボルト「甘いです」
 アヤセ「はっ、どっちが!」
 ギアボルト「あなたですよ。一撃目はフェイント、次の二撃目が…」
 アヤセ「残念でした。これもフェイントよ。本命は、こいつ!」
 ギアボルト「! ……危なかったです。あの体勢から、かかと落としですか。相変わらず常識外
        れな攻撃をしますね」
 アヤセ「常識なんて何度でも壊してみせるわよ。あんたを倒せるならね!」
 ギアボルト「いい覚悟です。では私も、本気で戦いましょう」
 アヤセ「! 凄い殺気……。ふふふっ、いいわ、それでこそ私の宿命のライバル! 存分に戦
      いましょう!」
 ギアボルト「…………すいません、審判。私、ギブアップします」
 アヤセ「なっ!? ど、どうして棄権するのよ! これからが本番なのに!」
 ギアボルト「ハエやゴキブリからライバル宣言されても闘志は沸きません。それでは」
 アヤセ「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! こんな決着、納得できるかーっ!!」
 ギアボルト「(小声で)これ以上戦ったら、本気になりますからね。私は死にたくないし、あなた 
        を殺したくもないんです」
 アヤセ「うがーっ!!」
 ギアボルト「アヤセさんは見ててとても面白い人ですから。くすっ」


その3.そして敗者がもう一人

 ガーネット「…………ニコル」
 ニコル「何も言わないでください。あの二人の関係を見誤った僕の負けです」



ショート51.
準決勝第ニ試合、アスランvsシン

その1.お前も応援しろよ

 アスラン「まさか勇者同士で戦う事になるとはな。だが、手加減はしないぞ、シン」
 シン「こっちこそ。あんたに勝って、決勝でも勝って、そして優勝だ!」
 アスラン「行くぞ! はああああっ!」
 シン「でやあ!」
 ルナマリア「うわっ、凄い気迫。二人とも本気ね」
 レイ「ああ。剣を振るう手にも迷いは無い。この勝負、一瞬でも気を抜いた方が負ける」
 カガリ「アスラン、ミーアの件については忘れてやる。だから負けるな!」
 ステラ「シン、ファイト……」
 イザーク「アスランもシンもやるな。特にシンの動きがいい。一回戦で強敵と戦ったことで一皮 
       向けたようだな」
 ディアッカ「そうか。シンの奴も大人の階段を上がったんだな。グゥレイト!」
 カガリ「頑張れアスラン!」
 イザーク「行け、そこだ、決めろ!」
 ディアッカ「完全無視かよ。下ネタは人を選ぶからなあ。もっと上品なネタを使うべきだったか。
        それじゃあ……」


その2.格闘技の試合を楽しむには知識も必要です

 アスラン「ハァ、ハァ……。やるな、シン。さすがは勇者の一人だ」
 シン「あんたこそ……ハァ、ハァ。ただの女たらしじゃなかったんだな」
 アスラン「それはとんでもない誤解だ。だが、そろそろ決着をつけよう」
 シン「ああ。これが最後の勝負だ。行くぜ!」
 アスラン「はっ!」
 シン「でやあっ!」
 ルナマリア「……ど、どっちが勝ったの? あ、アスランの剣が折れた!」
 レイ「シンの渾身の一撃に耐えられなかったようだな。この勝負、シンの勝ちだ」
 アスラン「見事だ、シン。俺の完敗だ。決勝戦も頑張れよ」
 シン「はい、ありがとうございます!」
 カガリ「アスランが負けた……。でもいい試合だったな」
 イザーク「ああ。歴史に残る名勝負だった」
 ディアッカ「そうか? 俺は退屈だったけどな。二人の動きが全然見えなかったし」
 カガリ「狩人の発言とは思えないな」
 イザーク「ディアッカ、お前は試合を見る前に自分を鍛え直せ」



ショート52.
決勝戦、シンvsアヤセ

その1.私も想像していませんでした

 ルナマリア「ついにここまで来たわね」
 レイ「ああ。恐らく読者の誰一人として想像していなかった組み合わせだ」
 ステラ「ステラも想像してなかった。ううん、できなかった。シン、途中で絶対に負けると思ってい
      たから」
 レイ「気にするな。俺もそう思っていた」
 ルナマリア「私も」
 シン「お前ら、本当に俺の仲間なのか?」


その2.ギアボルトは定時には帰るタイプ

 アヤセ「ついに決勝戦か。見てなさいよギアボルト、この戦いで私の強さを見せ付けてやる。そ
      してあんたの方から再戦したいって言わせてやるわ!」
 スティング「張り切っているところ悪いけど、ギアボルトならあのバカップルと一緒に帰ったぞ」
 アヤセ「えっ」
 アウル「『私の任務はこの二人を連れ戻す事です。茶番に付き合うほど暇ではありません』だっ
      てさ。俺たちは暇だから残ったけどさ」
 アヤセ「あ、あの女……。ふふっ、いいわ。だったら優勝トロフィーを持って帰って見せ付けて 
      やる! 見逃した事を後悔するような凄い試合をしてやる! あはははははは!」
 アウル「うわ、闘志満々だな。ギアボルトから祝勝会用の金を渡されている事は言わない方が
      いいかな?」
 スティング「そうだな。残念会になるかもしれないし」


その3.試合開始!

 シン「女だからって容赦しない。行くぞ!」
 アヤセ「容赦なんかしたらあんた、秒殺されるわよ。かかってきなさい!」

 イザーク「ほう。やるな、あのアヤセという女。シンの攻撃を見事にかわしつつ、的確に急所を
       攻撃している」
 カガリ「ああ。シンもかわしているから、実力的にはほぼ互角か。アスラン、どっちが勝つと思 
      う?」
 アスラン「分からん。だがこの試合、長引くかもしれんな。ならば…」
 ディアッカ「体力が勝っている方が有利。つまり男のシンの方が勝率は高いってわけだ。よし、
        それじゃあ…」
 アスラン「賭けるのは勝手だが、お前のポケットマネーからにしろよ。パーティーの金を勝手に
       使う事は許さん」
 ディアッカ「ちっ。グレイトじゃないぜ」


その4.ワンパターンは受け入れられたからこそワンパターンになったのです

 レイ「試合が始まって、そろそろ三十分か。両者とも体力の限界だな」
 ルナマリア「勇者のシンはともかく、あのアヤセって人、ここまで粘るなんて……」
 ステラ「凄い」
 シン「はぁ、はぁ……。まずい、俺の体力はもう限界だ。次で決める!」
 アヤセ「来るわね。受けて立つ!」
 シン「はああああああっ!」
 アヤセ「でやあああああっ!」

 ルナマリア「…………すれ違い様にそれぞれとどめの一撃を放ったみたいね。ど、どっちが勝
         ったの?」
 レイ「分からん。こういう場合、最初に膝をついた方が実は勝っているのがパターンなんだが」
 シン「うっ」
 ステラ「あ、シンが膝をついた」
 ルナマリア「じゃあ…」
 シン「た、立てない……。クソッ、俺の負けだ」
 ルナマリア「…………」
 ステラ「…………」
 シン「な、何だよ、その『期待を裏切りやがって』みたいな目は?」
 レイ「実際の勝負とフィクションの勝負は違う。俺たちはそろそろそれを学ぶべきだな」



ショート53.
武術大会、終了

 大会主催者「おめでとうございます、アヤセさん。賞金とトロフィー、そして優勝商品のアサルト
         シュラウドアーマーを差し上げます」
 アヤセ「あ、ありがとうございます! ううっ、人気投票で22位になって以来、いつかあの青髪
      甘党女を見返す日を夢見て頑張ってきたけど、ついにこの日が来たのね。これで次の
      人気投票であの女に勝てる望みが…」
 スティング「いや、それは無いだろ」
 アウル「夢見るのも程々にした方がいいと思うぜ」
 アヤセ「外野、うるさい!」
 主催者「アヤセさん、アーマーのサイズを合わせたいので試着してもらえませんか?」
 アヤセ「あ、はい」
 主催者「このアーマーは素晴らしいですよ。名前は悪っぽいですが、教会で七日七晩もの間、
      神聖な月の光と聖水を浴びせられ、魔の者は触れただけで火傷をするという聖なる鎧
      で…」
 アヤセ「ギャーーーーーーッ!! 熱っ、熱っ、熱っーーーーーーーー!!」
 アウル「うわあ、あんなに高く飛び上がって。あ、そのまま飛んで逃げた」
 スティング「女ならもっと可愛らしい悲鳴を上げろよ。ギャーッ!なんて悲鳴を上げるようじゃ、
        ギアボルトには勝てねえぞ」
 主催者「あ、あのー、アヤセさんはどこへ行かれたんですか? 賞金とトロフィーも置きっぱな 
      しなんですが…」
 アウル「あ、賞金は俺たちが貰っていきます。トロフィーは重いからいりません」
 スティング「祝勝会か残念会か、いや、あの女の火傷の治療費か。使いどころに迷うな」



ショート54.
我が家への帰還

その1.魔王デュランダル、職務終了

 ギアボルト「デュランダル王、魔王の代行、ご苦労様でした」
 デュランダル「いやいや、いい退屈しのぎをさせてもらったよ。例えるなら、良質の国盗りシミュ
          レーションゲームだったな。君たちが留守の間に領土を広げておいたが、構わ
          なかったかね?」
 ギアボルト「ええ。ですが、他の魔王たちが何か言ってこなかったですか?」
 デュランダル「プレゼントを贈ったら納得してくれたよ。ダブルGの軍には幹部たちに温泉旅行
          の招待券を、メレア軍には18禁雑誌のコレクションをプレゼントした」
 ガーネット「そんなので納得しちゃったの? 敵ながら情けない連中ね」
 ニコル「そうですね。特にダブルGさんのところは心配です」
 ギアボルト「職場放棄した人たちが言っても説得力がありません。少し黙っていてください」


その2.上も下もバカばっか

 ギアボルト「デュランダル王のおかげで我が軍の勢力は増強されました。この勢いで一気に世
        界征服をしましょう」
 ガーネット「そうね。今までサボってきた分、これからは真面目にやりましょう」
 ニコル「真面目に仕事をしているガーネットさんも素敵ですよ」
 ガーネット「ニコル……」
 ニコル「ガーネットさん……」
 ギアボルト「はいそこ、バカップル禁止。進軍の予定を立てましょう。アヤセさん、地図を持って
         きてください」
 ガーネット「アヤセならまだ帰ってないわよ。ついでにスティングとアウルも」
 ニコル「城に残っていた部下の皆さんは、みんな気絶してます。オーバーワークで体力の限界
      を超えてしまったんですね。デュランダル王、ちょっと働かさせすぎですよ」
 ガーネット「部下が動けないんじゃ何も出来ないわね。私も休もうっと。ニコル、一緒にご飯食 
        べましょう」
 ニコル「はい」
 ギアボルト「上も下も使えないのばかりですね。特にあのバカップルと、あの赤髪バカ女は」

 アヤセ「ハークション! うー、風邪かな? 火傷もまだ治ってないのに。どうして私ばかりこん
      な目にーっ!」
 スティング「それがお前の運命なんだろうな」
 アウル「いや、もう宿命レベル」


その3.『ゲーム』の代償

 デュランダル「久しぶりの王宮だな。ただいま、タリア。私が留守の間、何かあったかね?」
 タリア「何かあったどころじゃありません! 魔王ガーネットの軍勢が突然侵攻してきて、国をメ
     チャクチャにしていきました。税収が減ったので、貴方のお小遣いは当分ゼロです。い 
     いですね?」
 デュランダル「…………はい。調子に乗りすぎていました。どうもすいません」
 タリア「? 妙に素直ですね。まあ助かりますけど」



ショート55.
試練の搭に挑め!

その1.どういう構造なんだろう

 キラ「ここが試練の搭……。何て高い塔なんだ。頂上が見えないよ」
 ラクス「伝承によれば、神々が人間の知恵と力を試すために作った搭だそうですわ。その高さ
      は入った者の力に応じて高くなる。つまり、強い人が入ると搭も高くなるそうです」
 キラ「そうですか。じゃあムウさんなら楽に行けますね」
 ムウ「おい」


その2.バグじゃないけど致命的なミスですね、これは

 マリュー「この搭の最上階に神様がいるのね?」
 ラクス「ええ。そして試練を乗り越えた勇者に大いなる力を与えるそうです。ですが、今までこの
      搭の最上階に達した方は…」
 ムウ「一人もいないのか。そりゃハードな試練だな」
 ラクス「いいえ、結構いるそうです。力量に応じて高さが変わるので、初心者には絶好の稼ぎ所
      だそうですわ」
 キラ「じゃあ強くなってから来た僕達って…」
 ムウ「考えるな、キラ。これは搭を作った神様が悪い」


その3.準備万端?

 マリュー「最上階に行った人はたくさんいるけど、でも、神様に会った人はいないんでしょう?」
 ラクス「ええ。真の強者だけがたどり着ける、この搭の真の最上階……。神様はそこにいらっし
      ゃるそうです」
 ムウ「本当に強い奴だけが会えるのか。なるほど、確かにこれは『試練』だ」
 キラ「ええ。それじゃあ行きましょう。長い戦いになりそうだから、準備はきちんとしておきましょ
     う。水と食料、寝袋や日常雑貨、あと退屈しのぎ用の本とか携帯ゲーム機を…」
 ムウ「あ、キラ、お前それ、ニ○テンドー○Sじゃないか! どこで手に入れたんだ?」
 キラ「懸賞で当たりました」
 ムウ「なっ! 信じられない幸運だぜ……。俺なんか散々探し回っても見つからなかったから、
     仕方なくP○Pを買ったのに」
 キラ「PS○だって、いいゲームは多いじゃないですか」
 ムウ「けどなあ、やっぱり時代は…」
 ラクス「キラ、バナナはおやつに入るんですか?」
 キラ「お約束だね。うん、入るよ。でもあまりたくさん持っていくと重くなるから少なめにしてね」
 マリュー「試練に挑む前とは思えないくらいリラックスしているわね。頼もしいと感じるべきなの
       かしら?」



ショート56.
試練の搭の神様

その1.そう言われてもねえ

 ムウ「ったく、次から次へとモンスターが出てくるな。キリが無いぜ」
 マリュー「随分登ってきたけど、今はどの辺りなのかしら?」
 ラクス「今、わたくし達がいるのは138階。外で見た時より高くなっているようですわ」
 キラ「どうやら僕たちが強くなればなるほど、塔も高くなるみたいですね」
 ムウ「マジかよ。じゃあ俺たちは永久に頂上へは行けないんじゃないのか?」
 マリュー「食料も少なくなってきたわ。このままじゃ…」
 キラ「大丈夫です。ゴールは近いようですよ」
 ムウ「どうしてそんな事が分かる?」
 キラ「だってほら、あの階段の横の立て札」

 ここから先は神様のプライベートルームです。関係者以外は立入禁止!

 ムウ「分かり易いな、おい」
 マリュー「関係者以外って、そもそも誰が『関係者』なのかしら?」


その2.神様に願いを

 神様(マルキオ)「良くここまで来ましたね。私がこの搭を管理している神様です」
 ムウ「自分で自分の事を神様って言うのかよ。うさんくせー」
 マリュー「しっ、黙って」
 キラ「神様、僕達がここまで来たのは…」
 マルキオ「言わなくても分かっています。ですが人間界の事は人間の力で何とかすべきなので
        す。神の力に頼っていては、人類は進歩しません」
 ラクス「おっしゃるとおりです。ですが、わたくし達の力はまだまだ未熟なのです」
 ムウ「まあ早い話が、俺たちにもっとスゲー武器とか防具とか、あるいは連続レベルアップと 
     か、そんな特典をくださいって事です」
 マリュー「ムウ、言葉がストレートすぎるわよ」
 マルキオ「否定はしないんですね」
 キラ「事実ですから」


その3.パワーアップ!(約一名除く)

 マルキオ「私もここまで来た者を手ぶらで返すつもりはありません。皆さんに力を与えましょう。
       勇者キラには、集団の敵を倒せる魔法、フリーダム・サンダーを」
 キラ「ありがとうございます」
 マルキオ「白魔道士ラクスには、仲間全員の傷を完全に回復させる魔法、サイレント・ナイトを」
 ラクス「和訳すると『静かな夜』ですね。ありがとうございます」
 マルキオ「黒魔道士マリューには、聖なる光で悪しき者を消滅させる最高レベルの攻撃魔法、
       ローエングリンを」
 マリュー「はい」
 マルキオ「そして狩人ムウには……」
 ムウ「おう!」
 マルキオ「…………」
 ムウ「…………」
 マルキオ「…………すいません。狩人なんてマイナーな職業がここまで来るとは思ってなかっ 
       たので、武器を用意してませんでした。後日改めて来てくれませんか?」
 ムウ「何じゃそりゃああああああっ!!」
 キラ「またここまで上がるのは疲れるんですけど」
 マルキオ「大丈夫です。直通エレベーターの使用パスをお渡しします」
 ムウ「俺以外には至れり尽くせりだな」
 マルキオ「神とは不平等な存在なのですよ」
 ムウ「色々な意味で、お前が言うな」



ショート57.
魔物のエサ

その1.闇商人の役はロゴスの幹部です(爺さん。名前は不明)

 闇商人「はい、いらっしゃい。ここでは魔物をおびき寄せるエサを売っています。これを使えば
      時間をロスせずにモンスターと会えますよ」
 シン「色々あるな。干し肉、マタタビ、動物の血……。この紙は何?」
 闇商人「そこに書かれている言葉を叫べば、強力なモンスターが来るそうです。私は試した事
      はありませんけどね」
 シン「ふーん。えーと……『22位&3票』。どういう意味だ?」
 ステラ「人気は大事。でも気にしすぎてもダメだと思う。難しい」


その2.実はボスキャラ召喚用アイテム

 ルナマリア「これは人間の写真ね。これも魔物のエサなの?」
 闇商人「ええ。それを道端に置いておけば、凄く強い魔物が来るそうです」
 ルナマリア「ふーん、結構ハンサムね。あら? どこかで見たような気が……」
 レイ「この前の大会に出場していた奴だな。名前はニコル。なかなかの強者だったな」
 ルナマリア「これは使わない方がいい気がする。うん、決定」


その3.ダブルGはブチギレ寸前

 シン「何だ、これ? 『休暇届』?」
 闇商人「あー、それは効果ありません。連中はそんなの書かずに勝手に休むそうですから」
 シン「?」

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